飲食店開業に必要な営業許可。保健所の申請書類や設備の条件など解説

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記事の監修・執筆者:古川原

飲食店開業に必要な営業許可。保健所の申請書類や設備の条件など解説

飲食店を開業する際には、保健所の営業許可が必要です。許可が下りないと営業を始めることはできず、開業スケジュールにも大きな影響を与えます。

この記事では、営業許可取得までの流れを紹介するとともに、保健所に提出する必要書類や、設備・設計・工事に関する注意点などを分かりやすく解説します。これから飲食店の開業を検討されている方はぜひ参考にしてください。

なお、最終的な基準や必要書類は自治体によって異なることがあるため、必ず開業予定地を管轄する保健所に確認されるようお願いいたします。

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保健所の「営業許可」はなぜ必要?

飲食店は、不特定多数の人に料理や飲み物を提供する「食品を扱う営業」です。そのため、提供する食品を通じて食中毒や感染症などの健康被害が起こるリスクが常に伴います。
こうしたリスクを未然に防ぎ、安全で衛生的な環境を維持するために、食品衛生法(第52条)では営業開始前に保健所の「営業許可」を取得することが義務付けられています。

また、工事を始める前に保健所へ事前相談を行い、図面の段階で確認してもらうことも非常に重要です。
事前に基準をチェックしてもらうことで、工事中の設計変更や追加費用の発生を防ぐことができ、開業準備のスケジュール管理にも役立ちます。

営業許可手続きの流れ

1.保健所への事前相談

着工前に、開業予定の店舗が保健所の基準に合っているかどうかを確認するため、保健所の食品衛生担当に事前相談を行います。このとき、店舗の平面図を持参するとスムーズです。

一度工事が始まると設備や動線の修正が難しくなり、工期の遅れや追加費用の発生につながる恐れがあります。そのため、事前相談は非常に重要です。

また、飲食店ごとに食品衛生責任者を配置する必要があるため、資格を持っていない場合は、この段階で養成講習会を受講して取得しておきましょう。講習は1日で修了し、どなたでも受講ができます。

保健所への事前相談

2.営業許可申請を行う

必要書類を準備し、店舗を管轄する保健所に申請します。窓口での申請のほか、一部の自治体ではオンライン申請も可能です。管轄の保健所のウェブサイトにて確認してみましょう。

店舗が完成してから申請すると審査や検査が遅れることがあるため、完成予定の10日前を目安に申請を済ませると良いでしょう。

必要書類

  • 営業許可申請書
  • 施設の構造および設備を示す図面(2通)
  • 食品衛生責任者の資格証明書
  • 水質検査成績書(水道水・専用水道・簡易専用水道以外の水を使用する場合)
  • 許可申請手数料

出典:東京都保険医療局「食品衛生の窓」

3.保健所による施設検査

申請後、保健所から「検査日」の案内があります。保健所の担当者が実際に店舗を訪れ、申請内容どおりに設備が整っているか、また基準を満たしているかどうかを確認します。検査時には申請者本人または店舗担当者の立ち会いが必要です。

検査時間はおよそ30分~1時間程度です。もし施設基準に適合していなければ後日再検査となり、開業スケジュールが遅れることもあります。事前の確認と準備をしっかり行いましょう。

保健所による施設検査

4.営業許可証の交付

検査に合格すると、営業許可証が交付されます。
営業許可証を店舗の見やすい場所に掲示することで、営業が認められます。営業開始後に設備や運営体制に変更がある場合は、速やかに保健所へ届け出を行う必要があります。

施設検査でチェックされるポイント

保健所の立入検査でどのような点がチェックされるのか、あらかじめ知っておくことで心の準備ができます。自治体によって細部が異なることもありますが、検査でチェックされる主なポイントは以下の通りです。

シンク シンクは2槽以上(食材用・食器用)設けられているか
熱湯は出るか
手洗い設備 レバー式やセンサー式など、直接手をふれずに操作できるか
手指を洗浄消毒する装置を備えた従業員専用の手洗い設備があるか
床・壁・天井 水はけが良く、掃除がしやすい素材か
照明・換気 十分な明るさと換気が確保されているか
トイレ 従業員数に応じた数のトイレが、厨房と区切られ衛生的な位置にあるか
専用の流水式手洗い設備を有しているか
冷蔵庫・保管庫 食材ごとに区分けされ、温度管理ができるか
排水設備 十分な排水機能を有し、汚水が逆流・滞留しない構造になっているか
害虫・ネズミ対策 出入口や窓に防虫ネット・ドアクローザーが設置されているか
調理器具・洗浄設備 清掃・殺菌がしやすい材質か
給湯設備 温水が十分に出るか
ゴミ箱 厨房にフタ付きのゴミ箱が設置されているか
更衣室 従業者の数に応じた十分な広さがあるか
作業場への出入りが容易な位置にあるか
食品衛生責任者 資格を取得済みで、名札や掲示物の準備があるか

参考:厚生労働省「施設基準の全体像」[PDF]

よくある不備の例

保健所の検査で不合格になる原因の多くは、設計段階での見落としです。以下のようなケースが指摘されることが多いため、注意が必要です。

  • シンクの数や大きさが基準を満たしていない
  • シンクにお湯が出る蛇口がない
  • 厨房専用の手洗い器がない
  • 手洗い器にハンドソープが設置されていない
  • 冷蔵庫に温度計が設置されていない
  • 床に排水勾配がなく、水がたまる
  • 厨房とトイレの間に仕切りがない
  • 食品保管用の棚や冷蔵庫が未設置
  • 害虫侵入防止対策(防虫網・エアカーテン)が不十分
  • 清掃道具が食材保管エリアに置かれている

こうしたトラブルを防ぐために、設計段階で保健所に図面を確認してもらうことが重要です。

よくある質問(FAQ)

飲食店の営業許可についてよく聞かれる質問をまとめました。

Q. 自宅の一部で飲食店営業はできる?

可能ですが、家庭用キッチンと営業用キッチンは明確に区分する必要があります。

Q. 居抜き物件でも申請が必要?

居抜き物件であっても必ず保健所への営業許可申請が必要です。
たとえ前の店舗が同じ業種(飲食店)であったとしても、許可を引き継ぐことはできません。

Q. 許可取得後に内装変更したら?

営業許可を取得したあとに内装や設備を変更する場合は、保健所への届け出または再申請が必要です。
軽微な変更であれば届け出で対応できますが、構造・用途を変えるような場合は再申請+再検査が必要となります。

Q. 申請手数料はいくら?

営業許可申請の手数料は自治体によって違いますが、おおむね15,000円前後です。
再交付にも手数料ががかかるため、許可証をなくさないように注意しましょう。

Q. 営業許可の取得までどれくらいの期間がかかる?

すべて順調に進んだと仮定しても、保健所の事前相談から許可書が交付されるまでには3週間程度かかります。
設備に不備が見つかると改善工事などでさらに時間がかかりますので、余裕を持ったスケジュールを組むことが大切です。

まとめ

飲食店の営業許可は設計段階から保健所と相談し、設備基準を満たしているかを確認しましょう。
また、保健所の検査も細かく設定されていますので、設計は飲食店専門の施工会社に相談すると安心です。
当サイトでは、飲食店の設計施工に強い業者を多数登録しています。飲食店開業について検討中の方は、ぜひ店舗設計施工.comにご相談ください。

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記事の監修・執筆者

  • 株式会社ライフワン 古川原

    保有資格:
    2級建築士
    第2種電気工事士
    一般建築物石綿含有建材調査者
    石綿作業主任者

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