基本を解説!飲食店の厨房レイアウト

投稿日:/最終更新日:
この記事は約3分で読めます
記事の監修・執筆者:古川原

基本を解説!飲食店の厨房レイアウトを解説

飲食店にとって、厨房(キッチン)のレイアウト設計は客席以上に頭を悩ませるのではないでしょうか。限られたスペースの中でスタッフが効率よく動けるように、必要な設備を適切に配置することは容易ではありません。
そこで今回は、飲食店の厨房レイアウトを設計する上で押さえておきたい4つのポイントをご紹介。基本的な厨房レイアウトの種類から、飲食店に必要な厨房機器まで解説しています。ぜひ、厨房レイアウトの設計にお役立てください。

お店と設計施工会社をつなぐサービス、
店舗設計施工.com

厨房の基本的なレイアウト

飲食店の厨房レイアウトを設計する前に、基本的な厨房レイアウトの種類について知っておくとスムーズです。
厨房には、直線型(I型)、L字型、2列型(Ⅱ型)、アイランド型の4種類があり、お店の広さやコンセプトに合わせて選ぶ必要があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットについて解説します。

直線型(I型)キッチン

シンクやコンロ、調理台などが一直線に並んでいるキッチンレイアウトのこと。別名、I型キッチンとも呼ばれています。
省スペースで設置できる点がメリットで、小さなお店や調理スタッフが1人だけのお店に向いています。またシンプルな構造のため、施工費用が安く済むというメリットもあります。
デメリットは他のレイアウトと比べて作業スペースが限られているため、複数人で作業を行う場合は手狭に感じることがある点です。

L字型キッチン

文字通りアルファベットの「L」の形にシンクやコンロを配置したレイアウトです。壁を2面利用しているため、作業スペースが広く取れる点がメリットで、2名以上で調理しても手狭に感じる可能性が低くなります。
また、収納スペースも増やせるため、食器を多く扱うお店に向いているでしょう。シンク、コンロ、冷蔵庫のワークトライアングルを短くすることもできるので、移動距離が少なくて済み、作業効率が上がるというメリットもあります。

デメリットは直線型に比べて施工費用が高くなることと、広いスペースが必要なこと。そして、L字の角の部分がデッドスペースになりやすい点が挙げられます。

2列型(Ⅱ型)キッチン

コンロとシンクを2列に分けて配置したレイアウトのこと。作業スペースが広く取れる点がメリットで、Ⅱ型キッチンやセパレートキッチンとも呼ばれています。
シンクの配置された列とコンロの配置された列が分かれているため、調理動線が明確になりスムーズに作業が行えます。ファミレスチェーンやホテルなど、調理スタッフが多くて作業を分担できる大型店の厨房に向いているでしょう。

デメリットは広いスペースが必要なため小規模なお店には向いていないこと、施工費用が直線型やL字型よりも高くなりがちなこと、そして背中合わせで作業するためコミュニケーションが取りづらいことなどがあります。

アイランド型キッチン

壁に接しておらず、島のように独立したキッチンのこと。調理の仕上げをお客様の目の前で行うためにアイランド型キッチンを構え、メインの厨房は別で用意するお店が多いのが特徴です。
調理をしながらお客様と会話を楽しむなど、ライブ感のあるお店に向いています。壁に接していないため動線が広く確保でき、開放感があるのもメリットです。

デメリットは一般的なキッチンよりも施工費用が高くなることと、広い設置スペースが必要なこと。また、壁に囲まれていないため汚れや煙などが周囲に飛び散りやすいことなどが挙げられます。

飲食店の厨房レイアウトの設計で大切な4つのポイント

飲食店の厨房レイアウトを考える上で考慮するべきポイントは多数ありますが、まずは以下の4つを基準に考えてみましょう。

厨房レイアウトの設計で大切な4つのポイント

1.動線のシミュレーション

狭い厨房の中で複数のスタッフが動く場合は、スタッフの動線が交差しないようにレイアウトを決める必要があります。

厨房では調理をする以外にも、お皿に盛りつける、配膳をする、洗い物をする、片付けるといった作業を行います。それぞれの作業動線が交差していると、スタッフ同士がぶつかったり、スムーズに食器や食材が取り出せなかったりと、大きなストレスを与えてしまいます。
反対に調理スタッフが1~2名のお店では、コンロ・シンク・冷蔵庫のワークトライアングルを小さくしてできるだけ移動距離を短くした方が、効率が良いでしょう。
このように一連の作業をリストアップした上で、その作業を行うスタッフがどのように動くのかをシミュレーションしながらレイアウトを考えることが大切です。

2.清潔さを維持できるか

食べ物を扱う飲食店の厨房は常に清潔にしておかなければなりません。清潔感のないお店はお客様が離れる原因になるだけでなく、食中毒などを起こす危険性もあります。
厨房を清潔に保つためには、汚れやゴミが溜まりやすい場所を極力なくすことが効果的です。たとえば厨房設備や調理機器を隙間なく配置することで、間に埃などが溜まるのを防ぐことができます。厨房設備のサイズをきちんと調べて、無駄なスペースを作らないように配置しましょう。

3.オープンキッチンかクローズドキッチンか

厨房を客席から見える「オープンキッチン」にするか、客席から独立した「クローズドキッチン」にするかは、お店のコンセプトや業態によって変わってきます。

オープンキッチンはお客様に調理している様子を見せることができるため、ライブ感のあるお店に向いています。たとえば、焼き鳥店や鉄板焼き店、寿司屋、ダイニングバーなど。お客様とのコミュニケーションが取りやすく、料理やドリンクをすばやく提供できるというメリットがあります。また、開放的な雰囲気も演出できるため、おしゃれなお店にすることができるでしょう。
デメリットは厨房が丸見えになるため、汚れた食器やゴミなどがお客様の目に入らないようにすることや、油や煙がお客様の方へ行かないように注意することなどが挙げられます。

客席から独立したクローズドキッチンは、お客様の視線がないため料理を作ることに集中できます。内装も機能性に特化できるため、実用的で使いやすい厨房にすることができるでしょう。生肉などを扱う焼肉店や、大量の料理を作る大型レストラン、ホテルなどではクローズドキッチンが採用されています。
デメリットは客席から離れているため、お客様とのコミュニケーションが取りづらいこと、料理の提供がオープンキッチンに比べて時間がかかること、お客様の目が届かないことで清掃などがおろそかになりがちなこと、などがあります。

4.ガス、水道(排水)、電気の位置を確認

新築でない限り、水道(排水)やガスなど既存のインフラ設備の位置を変更するのは難しいため、事前に位置を確認して厨房レイアウトを考える必要があります。既存の位置から離れれば離れるほど配管やダクトの延長工事が必要になり、余計なコストがかかってしまうためです。
電気についても延長コードで対応できると考えがちですが、転倒や火災などのリスクがあるためおすすめしません。厨房レイアウトを考えるときは、まずインフラ設備の位置を確認してから決めていきましょう。

厨房の最適な広さはどれくらい?

お店全体の広さを100%としたとき、厨房の広さは25~35%程度が適切とされています。たとえば30坪のお店なら、7.5~10.5坪程度が厨房の適切な広さと言えます。
とはいえ、これはあくまで目安となりますので、厨房スタッフの人数や提供するメニュー、お店のコンセプトなどによって変える必要があるでしょう。提供するメニューによって必要な厨房設備も変わってきますので、カフェやバーなど軽食を中心としたお店なら20%程度に減らせる可能性があります。

反対に、専門的な厨房機器を必要とする飲食店や、調理スタッフが多いお店の場合は40%程度まで広げる必要があるかもしれません。客席スペースとのバランスも考えながら、厨房の広さを決めていきましょう。

飲食店の開業に必要な厨房機器

最後に、飲食店の開業に必要な厨房機器を6つ紹介します。保健所が定めた設置基準を満たしていることが条件の厨房機器もあるため、事前に確認しましょう。

飲食店の開業に必要な厨房機器

1.シンク

シンクは最低でも、食材を洗うためのシンクと食器や調理器具を洗うためのシンクの2槽以上が必要です。シンクのサイズは1つあたり幅45cm以上、奥行き36cm以上、深さ18cm以上と定められています。食洗機を設置している場合は、それを1槽分とみなす場合があります。
さらに従業員用の手洗い器も厨房に必要です。手洗い器のサイズも決められており、幅36cm、奥行き28cm以上が必要です。
手洗い器の蛇口をレバー式等に変更することや、手指の消毒装置を設置することも義務付けられていますので、併せて確認しておきましょう。

2.調理台・コールドテーブル

調理や盛り付けなどの作業を行うための台です。下が収納スペースになっており、スノコ板付き、引出し付き、引き戸付きといったタイプがあります。素材は錆びにくくお手入れがしやすいステンレスが一般的です。
コールドテーブルとは横長の業務用冷蔵庫で、天板を作業台として使用することができます。いずれもスペースを有効に使うために役立つ厨房機器です。

3.冷凍冷蔵庫

サイズ展開が豊富で、扉数や冷蔵・冷凍の割合などにより様々なバリエーションがあります。縦型は省スペース、横型は天板が作業台として利用できます。
営業許可を取るためには庫内温度が分かる温度計が設置されていることが条件で、営業時間内で使用する冷凍冷蔵庫は厨房の区画内に設置することが義務付けられています。
冷凍冷蔵庫は容量も大切ですが、扉の開け閉めが十分にできるかどうかも確認する必要があります。

4.食器棚

食品営業許可では食器や調理器具を衛生的に保管するため、扉付きの食器棚を1台以上設置することが義務付けられています。吊戸棚タイプや床置きタイプがありますが、埃が溜まりやすい場所や掃除がしにくい場所に設置すると保健所の許可が下りないことがあるため注意しましょう。

5.熱機器

調理をするための熱機器には、ガステーブルやガスレンジ、フライヤーなどがあります。
ガスレンジとはオーブンとガステーブルが一体化したもので、同時調理ができるので作業効率を向上させることが可能です。
熱機器を選ぶ際は、コンロの口数やサイズ感、火力の強さ、安全性などを基準に検討してみましょう。

6.製氷機

お酒などドリンク類を提供するお店には必要です。製氷機には作業台としても使えるアンダーカウンタータイプや、腰をかがめずラクに氷が取り出せるバーチカルタイプなど様々な種類があります。
製氷機の選び方は席数が目安になります。1日あたりの製氷能力は席数の1.5倍程度あれば良いとされていますので、たとえば20席のお店なら20×1.5=30kg/日の製氷能力があるものを選びましょう。ドリンクメニューが多いお店では製氷能力に余裕を持たせておくと安心です。

まとめ

飲食店の厨房レイアウトを設計する上で大切なポイントについて解説しました。このほかにも安全性を確保することや換気を良くすること、将来お店が拡張することが予想される場合はあらかじめ拡張しやすいレイアウトにしておくことなどがポイントとして挙げられます。
厨房レイアウトを検討する際には専門家に相談するのもおすすめです。当サイトに登録しているデザイン設計事務所にご相談いただければ、最適な厨房レイアウトを設計いたします。

設計会社の検索はこちらから

お店と設計施工会社をつなぐサービス、
店舗設計施工.com

記事の監修・執筆者

  • 株式会社ライフワン 古川原

    保有資格:
    2級建築士
    第2種電気工事士
    一般建築物石綿含有建材調査者
    石綿作業主任者

    記事の監修・執筆者近影

    店舗設計施工.com運営担当の古川原です。施主様、店舗デザイン・内装工事・建築工事会社様にも満足いただけるよう皆様をサポートさせていただきます。
    コラムでは皆様の出店・開業に役立つ情報を発信していますので、当マッチングサービス内容も併せてぜひご覧ください!

    店舗設計施工.comとは

店舗開発・施設管理に役立つコラム

TOP