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執筆者:古川原

外国人観光客にも人気の高い日本の焼肉。「焼肉きんぐ」や「牛角」など、有名チェーン店も数多く展開されています。
焼肉屋を開業する際、「他の飲食店と何が違うの?」「内装で注意すべきポイントは?」と疑問に思う方も多いでしょう。本記事では、焼肉屋ならではの内装の工夫や女性ウケの良いお店づくりのポイント、法令上の注意点などを、事例とともに紹介します。焼肉屋の開業をご検討中のオーナー様は、ぜひ参考にしてください。
焼肉屋ならではの内装ポイント
焼肉屋は他の飲食店と比べて、内装で特に注意すべきポイントがいくつかあります。
1.煙・ニオイ対策
焼肉屋では、テーブルに設置した七輪やコンロから大量の煙が出るため、十分な換気による煙やニオイの対策が欠かせません。換気が不十分だと店内に煙がこもり、居心地の悪さにつながってしまいます。また、お店の外に煙やニオイが漏れて、クレームの対象となる場合もあります。
有効な対策としては、
- 無煙ロースターや卓上フードを使って煙をしっかり吸い込む
- 厨房と客席の空気の流れを考慮した空調設計
- 壁や天井のクロスには抗菌・消臭効果のある素材を使用
などが挙げられます。
また、焼肉屋は熱がこもりやすく冷房が効きにくいため、パワーのあるエアコンを設置するなどの工夫も必要です。
2. 清掃・メンテナンス性
焼肉屋では油煙やタレ、油の飛び散りなどにより床やテーブルなどがベタベタしがち。常に清潔に保つためには、あらかじめ掃除しやすい素材を選ぶことが大切です。
- 掃除が大変な壁は、防汚加工された壁紙を採用するか、防水・防汚フィルムなどを貼っておく
- 床は凹凸や継ぎ目があるとそこに汚れが溜まるため、なるべく継ぎ目の少ないものを選ぶ
- 油汚れを中性洗剤でふき取っても変色などが少ない素材を選ぶ
- 壁や床はお店の印象も左右するため、メンテナンス性だけでなく意匠性やコストとのバランスも考慮する
これらを踏まえておすすめ素材を紹介します。
焼肉屋の壁におすすめの内装材
| メラミン化粧合板 | 表面が硬質で拭き取りやすく、耐久性もあるため多くの焼肉屋で採用されている。木目調や石目調などデザインバリエーションも豊富。 |
|---|---|
| クロス | 色柄のバリエーションが豊富で単価も手ごろ。焼肉屋の場合は防汚加工や消臭加工が施された高機能タイプや、表面強化型クロスがおすすめ。 |
| タイル | 配置や組み合わせ方によってさまざまな柄を表現できるタイルはおしゃれな空間を演出しやすい。色褪せしにくく拭き掃除が容易なので焼肉屋にも使いやすい。ただし、コストがかかる。 |
焼肉屋の床におすすめの内装材
| クッションフロア | 石目調などデザイン性が豊富。厚みがしっかりあるタイプなら、耐摩耗性・耐水性にも優れる。 |
|---|---|
| フロアタイル(ビニル床タイル) | 耐摩耗性・耐水性に優れ、デザイン性も高い。滑り止め仕様のものを選べば安全性も上がる。 |
| コンクリート+表面処理 | 無骨で店の個性を出す演出にも使える。表面保護剤や滑り止め剤を併用して安全性を確保。 |
| 磁器タイル | 高級感を出したい客席ゾーンに使うのもおすすめ。ただし施工コストや目地の掃除性を考慮する必要あり。 |
3. 火災・安全対策
焼肉屋は、他の飲食店に比べて火災リスクが高い業態です。特に近年は無煙ロースターが原因となる火災が相次いでいます。
無煙ロースターとは、テーブルに埋め込まれたロースターに排煙機能を組み込んだもので、煙やニオイを下方向に吸い込む仕組みです。大きなフードが不要で見た目がすっきりする、吸引効率が高いといったメリットがあります。
一方で、煙と一緒に油も排気ダクトへ入りやすく、卓上フードに比べて油汚れが蓄積しやすいというデメリットがあります。油が溜まったまま高温にさらされると、引火の危険性が高まります。
そのため、無煙ロースターを導入する場合は、
- 定期的なダクト清掃
- 温度センサーや自動消火機能付きの最新型ロースターの採用
といった対策が欠かせません。
さらに、消防署の指導に基づき、
- 消火器やスプリンクラーの設置
- 避難経路や出入口幅の確保
なども、開業前の計画段階で確認しておくことが大切です。
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女性客やファミリー層へのアプローチ
焼肉屋は有名チェーンを除き、女性客や小さなお子様連れのファミリー層が入りにくいイメージを持たれやすい傾向があります。しかし、内装やレイアウトを工夫することで、女性客などを呼び込むことは十分可能です。
具体的には以下のようなポイントがあります。
ニオイと煙対策を徹底する
女性は特に髪や服にニオイが付くのを嫌がる傾向があります。テーブルごとの換気や客席全体の空調を工夫し、煙が漂いにくい環境を作りましょう。抗菌・消臭効果のある内装素材も有効です。
個室や半個室を導入する
女性グループやカップルはプライベート空間を好む傾向があります。個室の設置が難しい場合は、間仕切りで目線を遮るだけでも安心感がアップし、居心地の良さにつながります。
明るく清潔感のあるデザイン
黒や赤など焼肉屋らしい色だけでなく、木目や白系を取り入れることで女性客の入店時のハードルを下げることができます。また明るいカラーは清潔感があり、掃除が行き届いている雰囲気をつくり出すのにも効果的です。
コンパクトで座りやすい椅子
女性客やファミリー客には、ハイチェアよりもゆったり座れる椅子やソファー、少人数向けのテーブル席を用意すると、食事がしやすいという安心感を与えることができます。
サービス、動線の工夫
注文や配膳がスムーズに行え、煙に触れにくい動線を整えます。食べ終わった食器をスムーズに片づけられるレイアウトも重要です。
またトイレも重要ポイント。清掃が行き届いていることはもちろん、あぶら取り紙や爪楊枝、マウスウォッシュなどのアメニティを置いておくと喜ばれます。
おしゃれな焼肉屋の内装事例
最近はおしゃれな焼肉屋が増えています。当サイトに登録されている事例の中から、内装デザインにこだわりのあるお店をご紹介します。
建築基準法・消防法から見た注意点
焼肉屋を含む飲食店を開業する際には、建築基準法と消防法の双方から多くの規制を受けます。特に焼肉屋は店内で火気を使用するため、他の飲食店以上に火災のリスクが高く、内装材の制限や防火設備の設置が重要になります。
建築基準法の観点
用途変更・特殊建築物の扱い
飲食店は、「不特定多数の人が利用」し「火災の危険性が高い」ことから、特殊建築物に指定されています。特殊建築物は他の用途に比べて建築基準が厳しく制限されているため、もともと飲食店だった居抜きを使う場合はすでに建築制限に対応していますが、他の用途から変更する場合は注意が必要です。
内装制限
火気を使用する部屋では、建築基準法により準不燃材料以上で壁や天井の仕上げを行うことが義務付けられています。防炎性能のないビニールクロスなどは準不燃材料ではないため、原則使用できません。
換気・排煙設備
焼肉屋では通常の排煙設備の設置義務とは別に、焼肉屋特有の衛生面・環境面から十分な給排気設備の設置が重要です。ロースターや卓上フードを導入する場合、給気・排気バランスを踏まえた空調計画が必須となります。
消防法の観点
防炎対象物の使用
消防法上の規制により、カーテン、じゅうたん、布製ブラインドなどは防炎性能基準を満たした「防炎物品」を使用する必要があります。
自動火災報知設備の設置
飲食店などの特定防火対象物では、延べ面積300平方メートル以上の場合に、自動火災報知設備の設置が義務付けられます。地階または無窓階では、床面積100平方メートル以上の店舗でも設置義務が生じます。
消火設備の設置
消火器は一定規模(飲食店の場合、延べ面積150平方メートル以上など)で設置義務があります。スプリンクラー設備は、より大規模な建物や、地階・無窓階の面積、建物の階数などに応じて設置義務が生じます。
避難経路・非常用設備
誘導灯はすべての飲食店に設置義務がありますが、避難器具は建物の階数や収容人数、避難経路の状況によって必要性が変わります。これらを含め、消防用設備の設置計画は消防署への届出と事前確認が必要です。
ダクト・排気系統の防火対策
防火ダンパーは、火災の際に延焼を防ぐ目的で、排気ダクトの防火区画の貫通部などに設置が義務付けられています。また、油煙が溜まるダクトは火災の原因になるため、定期的な清掃(特定防火対象物の厨房設備等のダクトは1年に1回以上など)が義務付けられています。
【まとめ】ポイントを抑えて繁盛する焼肉屋に!
焼肉屋の内装計画では、一般的な飲食店に比べて煙や油、火気のリスクが大きいため、内装デザインの工夫と、建築基準法・消防法の両面からの安全対策が欠かせません。
「快適さ」と「安全性」を両立するため、さまざまな専門知識が必要となります。焼肉屋の内装でお困りの方は、ぜひ当サイトの無料相談フォームをご利用ください。焼肉屋の施工に詳しい専門業者が、物件選びから丁寧に対応いたします。
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記事の監修・執筆者
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株式会社ライフワン 古川原
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- 所有資格
- ・2級建築士
- ・第2種電気工事士
- ・石綿作業主任者
- ・一般建築物石綿含有建材調査者
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店舗設計施工.com運営担当の古川原です。施主様、店舗デザイン・内装工事会社様にも満足いただけるよう皆様をサポートさせていただきます。
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